東のそらの赤い月

※この詩の下に「旅と少年」の物語を掲載しています。

 

 

この人を 

父に 選んで 

 

次に あの人を 

俺を産む 母に 

選びました

 

 

今生は 

波瀾万丈は 

やめて

 

だけど 

ほどほどに 

糾える縄の如く

 

紆余曲折な 

筋書きを

立てて来た

 

なんて 

 

あの日の俺が 

言う

      

 

まぁ 何となく 

言われてみれば   

 

何処からか 

此処に 来る前に 

誰も 皆んな    

 

そんな風な 

脚本(シナリオ)

抱えて 

 

台本通り 

生きてるように 

見えてくるが

 

 

どうでもいいか 

そんなことは 

 

家路を 急げ 

腹が 鳴る

 

 

 

赤い月が 

東の空で 

 

いつのまにか 

俺をみている

 

ぼんやりと 

なにか 言いたげ 

 

この世界に 

意味はない…ってさ  

 

 

在るような 

俺と この世界も

 

ほんとうは 

ないなんて 

 

ピンと来ない

 

 

過ぎ去った 

記憶や 出来事も 

 

まだ来ぬ 未来と 

箱の中 遊んでいる

 

 

それが どうした! 

とりあえず 

 

家路を 急げ 

腹が 鳴る    

 

 

 

赤い月が 

追いかけてくる

 

俺のことを 

知っているって

 

 

月の ふりして 

空に 浮かんだ

 

おまえこそ 

何を 問うんだ 

 

この 俺に

 

 


※↑「西へ向かう」の姉妹曲(似た旋律あり)になります。

※↑「旅と少年〜西へ向かって〜」という演奏会の企画

  のために創った曲です。

 ↓物語の内容(語りと歌詞)を、以下にご紹介します。

  歌詞は()内のリンク先をクリック!


旅と少年 〜西へ向かって〜

 

東の空の赤い月

 

東京で2、3年を過ごしたあと、

実家に戻った俺は

故郷の街工場で働き始めていた。

それより、だいぶ以前から、

この街の周辺に、国際的な、途方もない

研究施設の誘致の話があって、それ以来

俺は、そのことで、胸がずっと

ざわついたままだった。

 

周りには、誰ひとり、

この、ざわつき話の相手を

まともにしてくれる人は、いなかった。

の〜んびりした空気が流れる、この街に

そんな、途方もない物が

出来てしまうかもしれない…

 

その意味が、自分には、どうにも

理解できないまま、

みるみるうちに、日々は過ぎていた…

 

俺は、物心ついたころから、

この世界の不可思議さに

ついて、考えることが多かった。

 

例にもれず、今回も、

そもそも…人間はなんでこの世界に

放り出されてくるんだろう。

 

なんのため??

 

そんな、究極のそもそも論に、

しまいには

行き着いてしまう…

 

おっと…

俺の、このぐるぐるした思考を、

盗み聞きしてるヤツがいるぞ。

 

いつのまにか、そいつは、  

どでかくて、まん丸い、赤ら顔で

うすぼ〜んやりと、

東の空に浮かんでいた。

 

(東の空の赤い月:上記の歌詞参照)

 

西へ向かう

 

あれこれ 考えあぐねているうちに 

俺は 急に 衝動にかられ 街工場をやめた 

 

 

そして 旅に出てみることにした 

 

とりあえず 西の方角へ あてもなく

 

(歌詞:西へ向かう

 

 

天を仰いで

 

同じ人間でも その暮らしっぷりは 

こうも 違うものなんだな

 

旅をしながら それぞれの土地の 

あまりに突飛な その生き様に 

驚愕しまくりながら

 

俺のなかの いろんな本能が 

眠りからさめていくような感覚を 

味わっていた

 

しかし だからと言って 

彼らの様な暮らしが 

実際この俺にできるのか…と言ったら

 

それはまた 別だな…という矛盾を 

心のどっかに 抱えてもいた

 

そんな自分が ちょっと嫌だな…

と思いながら 

 

遊牧民の子どもたちの純朴さを

ぼんやり 眺めていた

 

(歌詞:天を仰いで

 

みはてぬ大地 もの言わぬ空

 

ユーラシア大陸は 

なんだか すごかった 

 

スケールが ハンパない…

 

我を忘れている瞬間が 何度もあった 

 

空と 大地の 境目 

俺と それらの境目も ないような…

 

もともと 俺らに 

分別って 必要だったんだろうか 

 

そういう疑念すら 湧いて来てしまう

 

(歌詞:みはてぬ大地もの言わぬ空

 

蜃気楼

 

そういれば 俺は 昔から

沙漠に 強い 憧れが あった

 

なんでだろう

 

よく 前世にゆかりが… とかなんとか 

いろんな こじつけをされてきたが

 

単純に 子供の頃 月の沙漠の世界に 

おおいに想像力を かきたてられたんだろう

 

砂丘のはてに どんな世界があるのか 

どこまでも 行けるだけ 行ってみたい…

 

そう 思っていた

 

今 その沙漠のなかに ひとり居る 

 

一番星を 合図に 

満天の 星空が いっせいに 

 

あれや これやの お伽噺を

おっぱじめた

 

俺は あまりに至福な この感じに 

感極まって 少し 泣いた

 

(歌詞:蜃気楼

 

 

 

たくらまからたん

 

とうとう 沙漠のはてまで 

やってきて しまった

 

こんな 沙漠の外れにも 

小さな村があって 

なんだか 妙に にぎわっていた

 

ん?? 村の少女が 

でっかい 麻の袋に入れられて 

 

数人の若者が 彼女を担いで

連れ去ってく

 

誘拐??とおもいきや 

よく見ると 

 

周りの大人たちが 皆 

歓喜の声を はりあげている

 

少女の 連れ去られた先は 

となり村の 嫁ぎ先で

 

袋から出されて はじめて

婿と 対面するのだそうな…

 

うわぁ…

 

なんだか すごく 

気の毒な気分になってたんだが 

 

村の人々は なぜだか

み〜んな しあわせそうだった

 

しあわせって 

いったい なんなんだろう 

 

俺には なんだか…

ますます わけがわからなくなった

 

(歌詞:たくらまからたん

 

輪舞

 

とある土地で 村祭りにも出くわした

そこでは 老若男女 誰もが

自由な活気で あふれていた

 

なんだか 懐かしい…

遠い昔に 失ってしまったような

この自由さは なんなんだ?

 

ここは 現代なのか??ん??

 

もしや 違う時代に

 

紛れ込んでしまったのか?

 

馬車で通りかかった青年が

村のむすめと 踊りだした

 

(歌詞:輪舞 

 

 

 

名もない花

 

はてしなく続けてきた この旅も 

そろそろ 終えて 故郷に帰ろう 

 

そう思ったのも 唐突だった…

 

生まれ育った 俺の故郷…

 

そこに どんな 複雑な想いがあろうと 

どんな矛盾を 抱えていようと

 

帰る場所がある そのありがたさが 

急に 身にしみてきてしまった…

 

旅の途中で 出逢った あのじいさんが 

そのことに 気づかせてくれた

 

帰ろう 家路へと 戻ろう 

じいさんに見送られ あの舟に乗って…

 

道ばたに 名前もしらない花が 

ただ 風に揺れていた

 

(歌詞:名もない花

 

 

四月の朝に帆をあげて

 

 

船が 早朝に出港した 

 

数ヶ月で 故郷へ 戻れるだろう 

 

一夜明けて デッキで眼にした 

あの 朝焼けの 海の色を 

 

俺は生涯 忘れないだろう

 

(歌詞:四月の朝に帆をあげて