二人静 futarishizuka

※最下部に、演奏会での解説を貼っています※

 

 

 

浮き世の 風よ 

 

なぜ 吹き止まぬ 

 

 

語り 継がれる 

 

ことが あるとて           

 

 

後の 歴史に 

 

名を 残しても 

 

 

癒えぬ 御魂に 

 

刻まれた 日が 

 

吹き 荒ぶ 

 

 

 

強者 どもの

 

ゆめの跡 など 

 

 

想い出 ひとつ 

 

残さぬ まま

 

 

 

修羅ゆく 者は 

 

なにを ゆめみた 

 

乾いた 風が 

 

吹き抜けて 

 

ゆくだけ

 

 

ーーーーーーーーー

 

しづやしづ

賤の苧環 

繰り返へし 

昔を今に

なす由もがな

 

    ……(和歌引用)

ーーーーーーーーー

 

(菜)

わたしに 身を重ね 

 

わたしに 身をあずけ 

 

さあ 寄り添ひて 

 

ともに 

 

舞いましょう

 

 

(静)

菜を摘む 貴女の 

 

やさしく 春を呼ぶ 

 

その 声に 

 

ひきよせられ 

 

涙ぐむ わたしです

 

 

(菜)

想いの たけを

 

舞いましょう 

 

わたしが あなたを 

 

映すから     

 

 

(静)

白雪を 踏み分けて 

 

吉野の 峰に 

 

姿を 消した 

 

あのひとが 

 

恋しい

 

 

ーーーーーーーーー

吉野山 

峰の白雪

ふみわけて

入りにし人の

跡ぞ 恋しき

 

     ……(和歌引用)

 

ーーーーーーーーー 

 

 

 

強者 どもの

 

ゆめの跡 など 

 

 

想い出 ひとつ 

 

残せぬ まま

 

 

 

修羅ゆく 者は 

 

なにを ゆめみた 

 

乾いた 風が 

 

吹き抜けて 

 

ゆくだけ… 

 

 



<曲の解説>

 幽玄世界のにじり口の初演(2017.12.22)にて

 お配りしたパンプレットの文章を、そのまま

 転載します。

 

 

幽玄世界のにじり口     2017.12.22.

 

本日は、ご来場いただき誠にありがとうございます!

今宵お届けする曲は、お能の演目を題材に創作させて

いただいた、十四篇の梅吉曲でございます。

 

お能について正式な知識もない梅吉の、個人的な感性

のみで、自由気儘に創らせていただいている楽曲であ

りますことをご了承のうえ、十四篇の世界をご堪能頂

けましたなら、幸いでございますm(_ _)m     

 

<二人静(大和·吉野)>

静御前は、義経の恋人の白拍子。義経とは、吉野山で

生き別れ、義経は妻子を伴い自害。一方、静御前は、

囚われた身重の身でありながら、時の権力者を前に、

敵対する恋人を慕う歌を舞ってみせる、気丈な女性。

 

しづやしづ賤の苧環繰り返へし昔を今になす由もがな

 

吉野山 峰の白雪ふみわけて入りにし人の跡ぞ恋しき

 

これほどの想いを味わった生涯…誰かにその想いを吐

露して受け止めてもらわないことには、苦しすぎて、

とても成仏なんてできないんじゃないでしょうか、、

能「二人静」では、静の霊が取り憑いた菜摘の女と、

静御前本人の霊との二人舞という設定で描かれていて、

憑依するだけでは足りず、自らも霊として現れる凄ま

じい気迫の持つ女性と表されています。菜摘の女自身

も、取り憑かれ気味悪く感じている様子が伺えます。

ですが、楽曲の方では、菜摘の女性が静御前の想いを

必死に受け止めてあげよう…という心境で、共に舞っ

ているという、私の希望的設定で構成されております

ことを、ご了承くださいm(_ _)m