千筋の糸で織る衣 〜衣通姫の伝言〜 tsuchigumo

 

 

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小竹葉に       

打つや 霰の

 

たしだしに

 

率寝てむ後は  

人は 離ゆとも

 

 

愛しと            

さ寝しさ寝てば

 

刈薦の

 

乱れば 乱れ 

さ寝しさ 寝てば 

 

     … …(和歌引用)

 

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いろを 求めて

 

彷徨うて

 

 

我が名を 辿る

 

惑いびとよ

 

 

衣を 透かし

 

みえたもの など

 

 

ひかり あっての

 

神の 仕掛けよ

 

 

夢に 現に

 

まぼろし の如く

 

織られし その衣は

 

 

名もなき 村の 

 

名もなき 娘が

 

 

ひとに 知られず

 

織りあげたと…   

 

知る由もない

 

だろう

 

 

 

なにを よすがの 

 

国の長

 

 

栄華の 影で

 

怯える なら

 

 

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蜘蛛の ふるまひ

予てより

 

知らぬ といふに

なほ 近づくは

 

 

      ……(謡曲引用)

 

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名もなき 郷の

 

土蜘蛛 と討たれ

 

 

歪められし 物語

 

 

時のない 国に

 

還れば

 

 

すべてが  

 

その手のなか     

 

 

浮かんでは 消え

 

 

あとかたも なく

 

とけてゆく だけ

 

それまでの 時  

それまでの 夢   

 

それまでの…

 

 

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我が夫子が   

来べき夕なり

 

小竹が根の 

 

蜘蛛の行ひ

今宵著しも

 

     … …(和歌引用)

 

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能では「土蜘蛛(つちぐも)」は妖怪として登場し

退治されてしまうのですが、もっと古い伝説等では

「土蜘蛛」は「天皇に恭順を表明しない土着の豪傑

等に対する蔑称」とのことで、伝承の内容や解釈も

様々にあるようでした。

その伝承内容にとても心が痛み、お能での物語とは

全く別の、梅吉オリジナルの物語を創作しました。

その自作の物語に基づき創ったのが、この曲です。

<あらすじ(自作の物語)>

衣通姫に美しい衣を織って献上したのは、朝廷に抗い

独立して暮らしていた、土蜘蛛一族の女酋長の娘。

衣通姫には様々な伝説が残るが、本当は恋い慕った

相手は、衣を織った娘の実の兄だった。

一族は、やがて討たれた。

その後、衣通姫は、生涯を巫女として生きた。

和歌は、その土蜘蛛の彼を想っての歌。

…という、あくまでもオリジナルの設定。

(史実や伝説とは、全く関係ありません!)


【記紀等による衣通姫の史実】

【この物語における架空の設定


【追記】2021.10.9.

ご紹介動画をアップしました。

 

動画の後半のあらすじ断片集が見づらくてすみませんm(__)m

以下にも貼付けてみました。

〜クロサギの視点から〜