昔は街にひとつづつ

 

昔は 町に ひとつづつ

鍛冶屋 仕立て屋 ふとん屋 おけ屋

 

なりわいびとが 軒列ね

八百屋 卵屋 魚屋 肉屋

 

冬が近づく 季節には

炭や 練炭 燃料屋の ハタ屋

 

夕ぐれどきに そそられて

蕎麦屋 うどん屋 ラーメン屋 寿司屋さん

 

町を 出ずとも 事足りました

困ることもなく 暮らしてたよね あのころ

 

ちゃりんこ飛ばし おつかいに

米屋 豆腐屋 くすり屋 酒屋

     

どこに寄り道 お駄賃で

飴屋 駄菓子屋 和菓子屋 文具屋

 

いつのまにやら 姿を消した

あの店 この店 どこいったんだ

 

 

HD町に 今もある店は 

肉の花静と 大正堂と

 

ひとつ残った スーパーの

母の頼みの まさのさんです

 

そんな町の ど真ん中に 

どでかい道路 ドカンと出来た

 

手押し車の おばあさんが

渡りきれると 思うのでしょうか

 

まさのさんまで 命がけだよ

あまりに遠いよ 向こう岸

(4車線もあるんだよぅ)

 

 

大型店が あちこちで

畑や田んぼ 潰してゆくよ

 

車がないと 行けぬ場所

母は 息子の車が 頼みの綱だ

 

やたらに広い 売り場ゆえ

カートを牽いて 大移動だよ

 

どこも似ている 陳列の

ひんやり寒い お買いものですね

 

整えられた パックの切り身が

キレイに 並んでいるけれど

 

なんだか 侘しいな

 

昔は 町に ひとつづつ…

 

 

『あの店、この店、

 

何処行っちゃったんでしょうね…』