おくやまのささはら 〜 鬼婆の糸つむぎ 〜

 

鬼婆は 

なんでも 知っている 

 

おまえさまの 心も 

お見通し

 

遠い 遠い 

山の奥に いても

 

遥か 遥か 

昔に 忘れさられても

 

 

鬼婆の あの唄 

せまる 夜

 

見え 隠れる 

間も なく 

 

すぐ 後ろ

 

泣ぐ わらしゃあ 

いねえが 

喰ってまうぞ

 

おくやまの

ささはらまで 

聴こえてきたぞ

 

 

いつまで 

泣いた とて 

叫んだ とて

 

やさしかった 

おっかあ 

 

戻らない 

 

さあ 紡げ 

泣いてねえで 

紡ぐだ

 

んでねば 

麻糸 喰らって 

おまえも 喰らうぞ 

 

 

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鬼婆は 幼女を 

脅かしながらも

糸紡ぎの手ほどきを

してやり

さりげなく励まして 

去ってゆく

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鬼婆が 帰るよ 

 

おくやまの 

ささはら 

 

山の神か…

 

機織りの使いか…

 

誰も 知らない

 

おくやまの

ささはら

 

夜も 昼も 

 

暗い 道

 

暗い 道…