自由(ゆめ)の鳥

※最下部に、朗読用の詩を載せています。

 

凍てついた 冬の空 

 

夜明け 間近の 

 

この 街に

                         

 

 

音のない 彼方から 

 

夜の なごりが 

 

響いてる

                         

 

 

朝靄に にじんでる 

 

橋の 灯りが 

 

消えてく

                         

 

 

やがて 太陽が のぼり 

 

すべてを 

 

照らすのだろう

 

 

なにも 語らず

 

 

 

けついた 傷あとが 

 

鈍い 痛みに 

 

変わるころ

 

 

ゆるやかに おもいだす 

 

何も もたずに

 

いた 頃を

 

     

            

晴れわたる空に 飛ぶ

 

名もなき 

 

自由(ゆめ)の鳥

 

 

ただ ひとり 

 

あるがゆえ 

 

己が空と とけあう

 

 

すべて とけあう

 


 

 

<朗読用>

 

ある 冬の未明 

 

午前5時を 少しまわったころ

 

早朝の 勤務で 

 

小雨が あがったばかりの

 

アスファルトの 道を

 

駅に向かって 歩いていた

 

 

北の 方角から

 

かすかに 

 

ゴウゥ…という音が

 

 

夜の 名残りを 

 

惜しむかのように 響いていて

 

夜明けの 近づく予感と 

 

交じり合っていた

 

 

 

おごそかな 神々しさ

 

 

この 数時間後には 

 

太陽が 昇って

 

無償の光を 注いでくれる

 

 

 

それを 

 

あたりまえのように 浴びて 

 

わたしたちは

 

 

また 今日も 

 

騒々しい 一日を 

 

過ごしてゆくのだろう

 

 

 

駅に向かって 歩きながら

 

あんなに 苦しかった心が 

 

少し 和らいでいる

 

と気づく

 

 

和らぐほどに 

 

想い出されるのは

 

たくさんの 感情を 抱え込む前の 

 

穏やかな 日々

 

 

ただ 自分を 信じていれば 

 

何も持たずとも 満たされる

 

 

そのことを 誰でも 

 

無意識では わかっている

 

 

 

それをなぜ 時折 

 

忘れてしまうんだろ

 

 

 

果てのない 峡谷を 

 

音もなく 

 

ゆったりと 飛んでゆく 

 

白頭鷲が

 

 

なぜか 脳裏に 

 

映し出されていた

 

 

名前など ない 

 

己を信じ 己を愛するがゆえ

 

 

そんな自覚すら 必要のない 

 

おおいなる 世界で

 

 

空や すべてと一体となり 

 

どこまでも 飛んでゆく

 

 

 

…駅に着いた

 

まぶしい 蛍光灯と 

 

少しの 喧騒が

 

 

この 人工世界に 

 

わたしを 引き戻し

 

 

いつもの 一日が 

 

また 

 

始まろうと していた