鉄輪 kanawa

※最下部に、演奏会での解説を貼っています※

 

しるべなき 夜の道 

いつのまに 丑の刻

 

足向くままに 鞍馬川 

橋を渡れば ゆめうつつ

 

月に照らされ 辿り着く 

貴船の宮に われを待つ

 

社人がひとり なにゆえか 

鬼となる術 伝えくる 

 

嗾けるは 門違い 

身に覚えなど なきことと

 

告げる そばから 

漏れ出すは 

 

隠し通せぬ 妄執の

 

われ忘れ ひた走る 

失いし 正気かな

 

 

三つ足に 灯をともし 

丹を塗らせ 怒るまま

 

変わり果てたる 

この形相(かお)は 

 

まことに

われのものなのか

 

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二葉の松の末かけて 

かはらじとこそ思ひしに 

などしも捨ては果て給ふらん

 

           ……(謡曲より引用)

 

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妻(うわなり)打ちに 

続いては 

 

添い遂げられぬ 

御身かな

 

ゆめ覚めやらぬ 

うちならば

 

今ひとおもい 

われの手で

 

迷い 振り払いて 

ともに 果てゆければ 

 

この 狂おしさも

晴れよう

 

三十番神 

ましまして 

 

まばゆき様を 

振りかざす 

oh…

 

打てど 愛しき 

迷い火の 

 

ゆめに 哭く 

晴れぬ まま

 

われ この姿 

あさましや 

 

闇に 紛れて 

 

あてもなく

 

あてもなく

 

 

 

 


<曲の解説>

 幽玄世界のにじり口の初演(2017.12.22)にて

 お配りしたパンプレットの文章を、そのまま

 転載します。

 

 

幽玄世界のにじり口     2017.12.22.

 

本日は、ご来場いただき誠にありがとうございます!

今宵お届けする曲は、お能の演目を題材に創作させて

いただいた、十四篇の梅吉曲でございます。

 

お能について正式な知識もない梅吉の、個人的な感性

のみで、自由気儘に創らせていただいている楽曲であ

りますことをご了承のうえ、十四篇の世界をご堪能頂

けましたなら、幸いでございますm(_ _)m  

 

 

 

<鉄輪(山城·貴船神社)>    ※妄執の鬼2※

夫に見捨てられた女が、貴船神社に毎晩祈願している

と、社人が女に神託を伝えます。鉄輪に蝋燭をつけて

怒る気持ちを持てば、鬼になれると。

一方、毎晩夢見が悪くなった夫は、安倍晴明に祈祷を

頼みます。清明が夫と新妻の身代わり人形を作り祈る

と、鬼となった先妻の女が現れ、恨みを述べて新妻を

打ち、夫の命もとろうとしますが、神々に追われ、

想いを遂げぬまま哀しく去ってゆきます。切ない…。