花筺 hanagatami

※最下部に、演奏会での解説を貼っています※

 

夢は 味真野 

うつつは 里 

 

はかり 切れない 

身の もとに

 

心 尽くした

手紙 添へられ 

 

届く 

あなたの 

 

花筺…

 

 

あさな 夕なの 

恋しさや 

 

おさえ切れない 

旅の はて

 

 

あれが あなたの 

御幸と 見さだめた

 

 

あの にぎわひの 

向こう側 

 

見え隠れする 

輿 追へば

 

ふいに 

落とされる 花筺 

 

口惜しや…

 

 

もはや まなこが 

定まらぬ 

 

想いの すべて 

曲に 舞い

 

あなたに あなたに 

見せつけましょう 

 

狂いながら

 

 

 

反魂香を 焚くように 

 

味真野の 日々 

 

焚き染めて…

 

 

−−−−−−−−−−−−

 

花の 筺の

 

名を 留めて

 

恋しき人の 

 

手慣れし物を

 

形見 と名づけ

 

初めし事 

 

この時よりぞ 

 

始まりける

 

…(謡曲より引用)

 

−−−−−−−−−−−−

 

 

ともに ゆきましょう 

 

ともに ゆきましょう

 

ゆめは 味真野

 

 


<曲の解説>

 幽玄世界のにじり口の初演(2017.12.22)にて

 お配りしたパンプレットの文章を、そのまま

 転載します。

 

 

幽玄世界のにじり口     2017.12.22.

 

本日は、ご来場いただき誠にありがとうございます!

今宵お届けする曲は、お能の演目を題材に創作させて

いただいた、十四篇の梅吉曲でございます。

 

お能について正式な知識もない梅吉の、個人的な感性

のみで、自由気儘に創らせていただいている楽曲であ

りますことをご了承のうえ、十四篇の世界をご堪能頂

けましたなら、幸いでございますm(_ _)m     

 

<花筺(越前·味真野)>

皇子に寵愛されていた照日の前の元に、ある日突然、

心込めたお別れの手紙と花筺(花かご)が届きました。

皇子の皇位継承が決まったから、という理由でした。

照日の前は恋しさのあまり物狂いとなり、侍女を伴い

都へ向かうと、偶然、即位パレードに出くわします。

臣下が、彼女達を追払おうと花筺を打ち落とします。

照日の前はこの非礼を咎め、これは天皇が皇子の時に

下さったものだと言い、懐かしみながら李夫人の故事

にことよせて舞います。(←”反魂香”の歌詞はこの関連)

天皇は照日の前に気づいて再会し、再び結ばれます。

 

天皇は第26代継体天皇、そして照日の前は、次の安閑

天皇をお産みになる、という設定になっています。