軒端の梅

 

 

過ぎた ゆめ 

 

まぼろし を 

 

偲ぶような 声で

 

 

この古木(すがた) 

 

様々に 

 

名づけ合う 人々

 

 

 

ありし日の名 

 

呼ばれては 

 

思ふままに 咲けぬ

 

 

 

人知れず 咲くならば 

 

今宵 舞い 歌おう

 

 

燃えさかり 

 

焼き尽くす 焰のなかに

 

 

立ち尽くす日も あった 

 

さまよいながら

 

ーーーーーーーーーー

 

門の外 法の車の 

音 聞けば 

われも 火宅を 

出でにけるかな

 

門の外 法の車の 

音 聞けば 

われも 火宅を 

出でにけるかな 

 

春の 夜の

闇は あやなし 

梅の花 

色こそ 見えね 

香やは 隠るる

 

色 よりも 

香こそ 哀れと 

思ほゆれ 

誰が 袖触れし 

宿の梅 ぞも

 

    …(和歌を引用)

 

ーーーーーーーーーー

 

名も 知らぬ 

 

旅の僧が 唱える 

 

その声が

 

 

呼び覚ますものは 

 

遠く 懐かしき 

 

想い出

 

 

春が 廻る度ごと 

 

この枝に 宿りて

 

 

花ひらき 香らせた 

 

われは 軒端の梅

 

 

 

いにしへに 刻まれた 

 

苦悶の 日々は

 

 

そこにある それだけの 

 

ゆめか まぼろし

 

 

ーーーーーーーーーー

 

門の外 法の車の 

音 聞けば 

われも 火宅を 

出でにけるかな

 

門の外 法の車の 

音 聞けば 

われも 火宅を 

出でにけるかな 

 

春の 夜の

闇は あやなし 

梅の花 

色こそ 見えね 

香やは 隠るる

 

色 よりも 

香こそ 哀れと 

思ほゆれ 

誰が 袖触れし 

宿の梅 ぞも

 

    …(和歌を引用)

 

ーーーーーーーーーー 

 

 

 




<曲の解説>

 幽玄世界のにじり口の初演(2017.12.22)にて

 お配りしたパンプレットの文章を、そのまま

 転載します。

 

 

幽玄世界のにじり口     2017.12.22.

 

本日は、ご来場いただき誠にありがとうございます!

今宵お届けする曲は、お能の演目を題材に創作させて

いただいた、十四篇の梅吉曲でございます。

 

お能について正式な知識もない梅吉の、個人的な感性

のみで、自由気儘に創らせていただいている楽曲であ

りますことをご了承のうえ、十四篇の世界をご堪能頂

けましたなら、幸いでございますm(_ _)m  

 

 

<軒端の梅(京·東北院)>

能「東北」。和泉式部の霊が、東北院にあるという

「軒端の梅」の枝に宿り、生前を振り返り舞います。

 

門の外 法の車の音聞けば我も火宅を出でにけるかな

 

色香に染まる生前を偲びつつも、今は迷妄から離れて

歌舞の菩薩となられました!